採用面接の録音をAIで文字起こし|応募者への同意の伝え方
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メモを取りながら次の質問を考えるのは、1人で採用を回している人にはきつい作業です。面接を録音してAIで文字起こしすれば、面接中は会話だけに向き合えます。ただし扱うのは応募者の個人情報です。社内会議の録音と同じ感覚では進められません。
分かれ目は録音していいかどうかではなく、録る前に何を伝えたかです。 今回確認した個人情報保護法のガイドラインと職業安定法の指針は、面接の録音を禁じていません。求めているのは、目的を示して取得し、その範囲で使い、不要になったら消すことです。
この記事でわかること
- 面接を録音するときに応募者へ伝える内容(例文つき)
- 録音から評価メモまでの手順
- 対面の面接に向く文字起こしの方法とツールの条件
録音の前に伝える一言が最重要
採用面接の録音は、目的と扱いを事前に伝えて応募者の了解を得たうえで行います。無断で録るのは避けます。
理由の1つは法律の要件です。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)では、個人情報を取得した場合、あらかじめ利用目的を公表しているときを除き、速やかに利用目的を本人へ通知または公表しなければならないとされています(最終確認日:2026-09-12)。面接の音声も応募者の個人情報です。
もう1つは信頼関係です。録音の目的は聞き逃しを防ぐことなのに、告知がなければ隠し録りに見えます。応募者が不信を書き込めば、次の募集の応募数に跳ね返ります。
さらに面接では、応募者が自分から健康状態や家族の事情を話すことがあります。同意なしで録ると、想定していなかった種類の情報まで記録として抱え込むことになります。
法律で押さえる4つの点
採用する側が面接を録音するとき、根拠になる決まりは次の4つです。いずれも録音を禁じるものではなく、扱い方を定めるものです。
1. 利用目的を通知または公表する
個人情報保護法のガイドライン(通則編)の要件です。「選考の判断と社内共有のため」のように、何に使うかを言葉にして伝えます。
2. 要配慮個人情報は原則として本人の同意が必要
病歴や障害、信条、犯罪の経歴などは要配慮個人情報にあたります。ガイドラインでは、法令に基づく場合など限られた例外を除き、取得には本人の同意が必要とされています。面接で応募者が自ら口にした内容も、録音すれば記録に残ります。
3. そもそも集めてはいけない情報がある
職業安定法にもとづく指針(平成11年労働省告示第141号)は、次の3つを原則として収集してはならないと定めています。
- 人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地その他社会的差別の原因となるおそれのある事項
- 思想及び信条
- 労働組合への加入状況
この指針の対象には、職業紹介事業者だけでなく労働者の募集を行う者や求人者も含まれます。自社で求人を出して面接する会社も入ります。指針は、個人情報の保管や使用も収集目的の範囲に限られるとしています(最終確認日:2026-09-12)。
4. 必要がなくなったら消す
個人情報保護法第22条は、個人データを利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならないと定めています。条文上は努力義務で、具体的な日数の指定はありません。日数は自社で決める必要があります。
応募者への伝え方と例文
伝える内容は5点です。目的、使う範囲、保存期間、文字起こしにサービスを使うこと、断れること。面接の冒頭で読む形にすると、言い忘れが減ります。
本日の面接は、評価の記録と社内での共有のために録音します。録音データは選考の判断にのみ使い、選考終了後30日で削除します。文字起こしにはAIの文字起こしサービスを使います。録音を希望されない場合はお申し出ください。その場合は手書きのメモで進めます。
例文の「30日」は自社で決めた日数に置き換えてください。第22条に日数の定めはないため、根拠は自社の運用になります。
告知は当日の口頭だけで済ませないほうがよいです。面接案内のメールにも同じ内容を書いておくと、応募者は落ち着いて判断できます。その場で初めて聞かされて断るのは、応募者にとってかなり勇気が要ります。
断られたときは録音せず、手書きのメモで進めます。断ったことを評価に反映させないと決めておくのが前提です。 録音を断ったら不利になる運用は、同意を取ったことになりません。
録音から評価メモまでの手順
流れは7段階です。ツールの操作は4以降だけで、前半は運用の整備です。
- 面接案内のメールに録音の告知を入れる
- 面接の冒頭で口頭でも伝え、了解を確認する
- 録音する(対面はスマホの録音アプリやICレコーダー、オンラインは会議アプリの録画)
- 音声ファイルを文字起こしツールに取り込む
- 話者のラベルを直す(面接官と応募者が入れ替わっていないか確認)
- 評価メモに必要な部分だけ転記する
- 選考が終わったら、音声と文字起こしの両方を消す
5を飛ばすと危ないです。声の特徴で話者を分ける方式は、席が近いときや発言がかぶったときにラベルがずれます。仕組みと対策はAI文字起こしの話者分離がずれる原因と対策にまとめています。
6には副産物があります。文字起こしを読み返すと、自分の質問のクセが見えます。前項の指針が挙げた本籍や思想に近い質問をしていないかを、記録で点検できます。口頭のやり取りは記憶に残りにくく、メモだけでは自分の発言まで残りません。
7の削除は、音声と文字起こしの2か所が対象です。文字起こしだけ消して録音がクラウドに残る取りこぼしが起きやすい部分です。
対面の面接に向く3つの方法
面接の記録方法は3つに分かれます。オンライン面接だけなら会議アプリの標準機能で足りることもありますが、対面が混ざると事情が変わります。
採用面接 | 記録のしかた
面接の記録3方法の向き不向き
対面の面接が混ざるかどうかで選ぶ位置が変わります
| 対面の面接 | 誰の発言かを分ける | 面接に集中できるか | |
|---|---|---|---|
| 手書き・手打ちのメモ ツール不要 | ○ そのまま使える | ○ 書いた本人が分かる | × 書く作業に手を取られる |
| Web会議アプリの文字起こし オンライン限定 | × 対面では使えない | ○ 参加アカウント単位で分かる | ○ 会話に向き合える |
| AI文字起こしサービス 録音を取り込む | ○ スマホ録音を流し込める | △ 声質で分けるためずれる | ○ 会話に向き合える |
- ※Web会議アプリの文字起こしは、契約プランや主催者の権限によって使えない場合があります
- ※どの方法でも、応募者への事前の告知は必要です
AIツールナビ
対面とオンラインが混ざる募集では、録音を取り込む方式が現実的です。会議アプリの標準機能は対面の面接では使えず、記録の置き場所が2つに分かれます。
ツール選びで見る4つの条件
面接の記録という用途では、精度の前に見る条件が4つあります。
1. 音声ファイルの取り込みに対応するか
対面の録音を後から流し込む使い方が中心になります。リアルタイム文字起こしだけのツールは、対面の面接では出番がありません。
2. 1回あたりの上限時間
面接は30分から60分です。1回の上限が数分のプランでは、面接をまるごと1本で処理できません。無料枠の制限はここに出ます。
3. 話者の識別があるか
面接官と応募者の発言が混ざった文字起こしは、読み返しに時間がかかります。完璧には分かれないという前提で、あとから直せる編集画面があるかを見ます。
4. 記録の削除とデータの保管場所
選考終了後に消す運用が前提なので、記録を1件ずつ削除できるかを確認します。応募者の情報を預けるため、データがどこに保管されるかも確認したい部分です。
Nottaの料金と上限の実際
上の4条件を満たす入口として、AI文字起こしサービスのNottaは候補になります。公式の料金ページに記載されている内容は次のとおりです(最終確認日:2026-09-12)。
| プラン | 月額 | 文字起こし時間 | 1回あたり上限 | AI要約 |
|---|---|---|---|---|
| フリー | 0円 | 120分/月 | 3分 | 10回/月 |
| プレミアム | 1,185円/月(年間プラン) | 1,800分/月 | 5時間 | 100回/月 |
| ビジネス | 2,508円/月(年間プラン) | 無制限 | 5時間 | 200回/月 |
同ページには、すべてのデータを日本国内に保管する旨とSSL暗号化の記載があります。応募者の情報を預ける相手として、保管場所が明記されているかは確認したい点です。
注意したいのは無料枠の中身です。フリープランは月120分と書かれていますが、1回あたりの上限は3分です。 30分の面接を1本で文字起こしする使い方には足りません。操作感を確かめる用途と、面接まるごとを処理する用途は分けて考える必要があります。
話者識別については、有料プランで対応する旨は読み取れましたが、フリープランの扱いは料金表から判断できませんでした。話者の分離を前提にするなら、申し込み前に公式ページで対応プランを確認してください。
面接の記録でありがちな失敗
運用でつまずくのは、ツールの機能ではなく後片付けの部分です。
- 選考が終わっても消さない:クラウドに数年分の面接音声が残ります。第22条の努力義務とも合いません
- 共有リンクを社内チャットに貼ったまま:リンクを知っている人が閲覧できる設定のままだと、範囲が読めなくなります
- 誤変換をそのまま評価メモに転記する:社名や資格名の誤りは、応募者の経歴を取り違えたまま記録に残ります
- 録音があるからと面接中の確認を省く:聞き返すべき点をその場で確認しないと、記録が増えても判断材料は増えません
情報の持ち出しや共有範囲の管理は、社内会議の議事録でも同じ課題です。チェックの観点はAI議事録の情報漏洩が不安な人の選び方にまとめています。
よくある質問
Q. 無断で録音したら違法ですか
録音そのものを直接禁じる規定は、今回確認した個人情報保護法のガイドラインと職業安定法の指針には見当たりませんでした。ただし取得時の利用目的の通知、要配慮個人情報の同意という要件を満たすには、事前に目的を伝える必要があります。実務では事前告知が前提と考えるのが安全です。
Q. 応募者が録音を断ったらどうしますか
録音せず、手書きのメモで面接を進めます。断った事実を評価に反映しないと社内で決めておきます。断れない前提の告知は、同意を取ったことになりません。
Q. 保存期間は何日にすればよいですか
法律に日数の定めはありません。第22条は「必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努める」という努力義務です。選考終了から何日で消すかを自社で決め、その日数を告知に書く形が運用しやすいです。
Q. 文字起こしサービスに音声を渡すのは第三者提供になりますか
委託にあたるか第三者提供にあたるかで扱いが変わる論点です。自社の契約形態や規程にあてはめた判断は、社内の規程と専門家への確認が必要です。この記事の範囲では結論を出せません。
Q. 対面の面接はスマホの録音で足りますか
机の中央に置き、応募者の側に少し寄せると声を拾いやすくなります。マイクの位置で話者の分かれ方が変わるため、本番前に1回テスト録音をしておくと安心です。
こんな人に向く記録のしかた
- 1人で募集から面接まで回している:録音とAI文字起こしの組み合わせ。メモの負担が面接の質を下げている状態を変えられます
- 要配慮個人情報に触れる可能性が高い職種:手書きのメモ。記録に残す範囲を自分で決められます
- オンライン面接だけで完結する:会議アプリの標準の文字起こしで足りる場合があります。プランと権限の確認が先です
- 月に面接が4本以下で、まず操作を試したい:無料枠から。ただし1回あたりの上限時間を先に確認してください
※料金・無料枠・機能は執筆時点のものです。最新は各公式でご確認ください。
※この記事は法令とガイドラインの公開情報を整理したものです。個別の事案の判断は専門家にご確認ください。
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参考にした情報
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(取得時の利用目的の通知・公表、要配慮個人情報の取得に本人の同意が必要な旨。最終確認日:2026-09-12)
- 厚生労働省「職業紹介事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い等に関して適切に対処するための指針」(平成11年労働省告示第141号。収集してはならない個人情報の3項目、対象に労働者の募集を行う者・求人者を含む旨、保管と使用は収集目的の範囲に限る旨。最終確認日:2026-09-12)
- Notta 公式料金ページ(プラン別の月額・文字起こし時間・1回あたり上限・AI要約回数、データの国内保管とSSL暗号化の記載。最終確認日:2026-09-12)